平成30年度科学技術週間行事平成30年度科学技術週間行事 理化学研究所 和光地区 一般公開 2018
4/21土 9時30分~16時30分(最終入場は16時まで) 入場無料
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SCIENCE LECTURE │
サイエンスレクチャー

会場:中央地区 レーザー研究棟 C32 (大河内記念ホール)
  • 海底の電気を食べる生物たち ~新たなエネルギー技術への可能性~

     今から約40年前に行われた海底調査により、太陽の届かないガラパゴス諸島沖の海底火山の周りに、たくさんの生物がいることが明らかになりました。一方で私たち人間は、毎日、植物が太陽光を浴びてできた作物を食べることでエネルギーを得ています。そのため、エネルギーの乏しい海底で多くの生物が見つかったことは、生命に対する考えを大きく変えました。では、なぜ、生命の存在しない死の世界と思われてきた海底でも、生物は生きられるのでしょうか? その謎を解く新たな手がかりとして、近年になり、海底火山は電気の流れを作り、電気を使って生きる微生物がいることが分かってきました。さらに、38億年近くも昔から海底火山の周りでは電気が発生し、生命誕生の神秘とも深く関わっている可能性もあります。太古の昔から海底には電気の流れがあったのに、人類がそれに気づいたのはごくごく最近です。生物と電気の密接な関わり、そこから見えてくる、新たなエネルギー技術への可能性、さらには生命の起源。最前線の研究を紹介します。


    アイスランドの海底に存在する巨大熱水噴出孔(チムニー)
  • 人工知能は人間のように言葉を理解できるのか

     人工知能の技術がSiri、Google Home、Pepperなど身近に感じられるようになってきました。囲碁や将棋の世界では人間のチャンピオンを遥かに凌駕し、米国ではクイズ番組で最強と言われた人間のチャンピオンを破っています。日本でも東大に入れるロボットの作成プロジェクトがあり、多くの大学に入学できるレベルまできたと言われています。しかし、本当のところはどうなのでしょうか?人間の言葉を計算機に理解させることをテーマに研究を25年続けてきた研究者がこの分野の現状と将来の見通しについて解説します。実際、人間の言葉を理解することは非常に難しく、現段階では人間と同じように「理解」することは非常に難しい課題だと考えられています。それは、人間が持つ常識や世界観を記号として計算機に載せることが難しいことや、言葉の多様性や曖昧性に関する処理を行うことが難しいことに由来します。具体例を交えて、専門家以外の方に理解していただけるようなレクチャーを行います。

  • 最先端のゲノム科学により癌の種を検出する

     日本人の約2人に1人は「がん」になると言われています。さて、「がん」って、実際にはどのようなものでしょうか?体の中の“できもの”や“悪性新生物”とか言われますが、今回は、体の中にできた「がん」を実際にスライドで見て頂きます。そして、「がん」がどのようにして発生すると考えられているのか、最新の科学の知見とともに解説します。現在のところ、「がん」の治療には、早期に発見して、「がん」を取り除くことが最も効果的です。そこで、最先端の科学により、「がん」をできるだけ早期に発見する試みなどを紹介させて頂きます。また、新しい治療法もどんどんと出てきています。一昔前と比べて、がんが不治の病でなくなりつつあるということを感じて頂けましたらと思います。皆様、お待ちしております。

  • 蓄積リングで見えること出来ること

    「物を見たい時、めまぐるしく動いているものより止まっているほうが見やすい。どこにあるか分からないほど数は少ないより沢山あるほうが見やすい。」こういう日常的な当たり前は、原子核のような小さな量子を見る際にも全く変わりません。目に見えない量子を、見かけ上止めたり増やしたりするカラクリ箱が蓄積リングです。理研のRIビームファクトリー(RIBF)では不安定な原子核を人工的に作り出して研究をしています。できた不安定な原子核は非常に数が少なく、しかも勝手に動き回っているので、そのままではかなり見辛い場合が多いのですが、それを蓄積リングに誘い込むことで、観念して素直になりその姿を私たちによく見せてくれます。本講演では、理研仁科センターに建設した蓄積リングとその働きについて紹介します。

    仁科センターRIBFの稀少RIリング。たった一粒の不安定な原子核を回すために建設した 理研初の重イオン蓄積リング
  • 殺菌用に実用化した紫外線LED

     青色LEDよりもさらに2倍程度エネルギーの高い「深紫外線」は殺菌や浄水、空気浄化、院内感染防止、生化学産業、樹脂加工・接着、速乾印刷・塗装・コーティングなど様々な用途が考えられ、今後の市場展開が注目されています。私たちの研究室では、深紫外LEDや半導体レーザーなど、これまで実現が難しかった未開拓波長の発光素子の開発を行っています。これまでの研究で、いち早く、深紫外半導体の高品質化に成功し、幅広い紫外波長(220-350nm)の深紫外LEDを世界に先駆け実現してきました。最近はさらに、フォトニック結晶や透明コンタクト層など新しい構造を導入することにより大幅な高効率化に成功し、20%を超える世界最高効率も樹立しました。現在我々は、殺菌用として実用化を目指し、「水銀ランプを凌駕する深紫外LED」の開発に取り組んでいます。深紫外LEDが普及すれば、様々な新しい産業が展開するばかりでなく、“夢の光”の普及により、豊かな生活空間を提供できます。本講演では、深紫外LEDの普及へ向けた開発の最前線を紹介いたします。

    開発した殺菌用・高出力深紫外LED(AlGaN半導体深紫外LEDの構造と発光の様子)
  • “ものを見透す”テラヘルツ光研究の最先端に挑む

     テラヘルツ光は、電波と光の中間にある電磁波です。電波のように物質を透過する性質と、光のように直進する性質の両方を持っています。この特徴を使えば、隠されたものを壊さずに透視したり、私たちの目では分からない物質の性質を見分けたりすることができます。このため、テラヘルツ光を利用した非破壊イメージング・センシングは、安心・安全な社会に役立つ次世代技術の一つとして注目されています。
     宮城県にある理研仙台地区では、テラヘルツ光研究に特化した拠点として研究開発を行っています。私の所属する研究チームでは、強力なレーザー光によって引き起こされる非線形光学過程という物理現象を利用して、テラヘルツ光を自由に操る発生・検出技術の開発に取り組んでいます。その中でも、私は極限性能を追求して、世界で一番明るいテラヘルツ光源の開発に挑戦しています。本講演では、実用化への試みも含めて、テラヘルツ光研究の最先端を紹介します。

    世界最大級の出力を有するテラヘルツ光源とそのビームプロファイル